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RAGの活用事例9選!メリットや活用シーンも解説

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rag

RAGは生成AIを利用する場合の課題を解決できることから、その活用が進んでいます。

ただ、RAGとはどのようなもので、どんな場面で利用できるのか、メリットは何なのかなどがわかりにくいかもしれません。そこで、この記事ではRAGの意味を解説するとともに、メリットや活用シーン、活用事例を紹介します。

RAGとは

まず、RAGとはどのようなものかを解説します。

RAGの意味

RAGとは「Retrieval Augmented Generation(検索拡張生成)」の略であり、通常の生成AIでは補えない部分をほかのソースから「検索」して、回答を「拡張」しながら「生成」するというものになります。

大規模言語モデルと呼ばれるLLMは、膨大なテキストデータをディープラーニングという技術で学習します。そして、人間が作る言葉と同じような違和感のない文章を作成します。ただ、このLLMを用いた生成AIでは、学習をさせたことからしか回答を生成することができません。

そのため、社内規定や顧客情報など、自社にしかない情報やリアルタイムに変化する情報をもとに回答を作成することができません。そんな時にRAGを用いれば、汎用的な内容だけでなく自社の業務に特化した回答を生成AIに作成させることができるようになるのです。

RAGの仕組み

RAGは特定のデータまで拡張して検索をするものであり、LLMとは異なる仕組みとなります。LLMでは一度学習をしたデータのなかから自動で回答を生成しますが、RAGでは「検索」と「生成」の段階を踏むことになります。

質問がされた場合に、RAGではまず自社情報やリアルタイムなどの外部の情報を検索します。これはLLMで学習した内容にないものを補うためです。そして、外部情報から質問に関連する情報を取得し、その情報をLLMに送信します。

その後、LLMのほうでは蓄積情報に加えてこれらの関連情報をもとに回答を生成します。RAGによって、LLMにはない外部情報をもとに、より正確かつニーズに合った回答が可能になります。

RAG活用のメリット

RAGを活用することで、LLMだけでは得られないメリットを得ることができます。

情報の信頼性

RAGを用いることで、情報の信頼性を高めることができます。LLMのみの生成AIでは、すでにある情報から強引に回答を作成してしまい、間違った内容を生み出す「ハルシネーション」が起こることがあります。

RAGを用いることで、関連する情報をより検索することができ、AIが無理やり情報をつなぎ合わせて回答を作成するという可能性を下げることができます。また、リアルタイム情報や顧客情報、社内規定など、更新された最新の情報をもとに回答を作るので、より信頼性の高い情報を返すことができます。

ほかにも、RAGでは研究や統計データ、ニュースから情報を検索できますし、出力するときに出典情報、参照情報を付けることができます。それによって、ユーザーはより信頼性の高い情報を得られますし、ソースを自身で確認することができます。

このように、RAGを使用することであらゆる面から情報の信頼性を確保することができるのです。

情報更新の効率化

RAGを使用することで、情報更新を効率化することができます。

LLMでは、新しい情報が出てきたときには情報を追加学習させる「ファインチューニング」が必要になります。このファインチューニングでは、再度追加学習用の学習データを作成しなくてはなりません。これには一定の工数がかかってきます。

RAGであれば、蓄積された外部情報から都度検索を行うので、追加で学習データを作成したり、学習させる必要がありません。情報更新という運用時のコストを抑えながら、常に最新の情報をもとにして生成AIが回答することが可能です。

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RAGの活用シーン

RAGは以下のように、企業における様々なシーンで活用することができます。

問い合わせ対応

RAGは問い合わせ対応に用いることができます。生成AIを利用すれば、顧客からの問い合わせに対してAIが自動で対応することが可能です。

例えば、企業や自治体、病院などへの電話やインターネット上での相談、問い合わせなどに対してAIが回答するものがあります。こういった場面においてRAGを用いれば、社内規則や最新の情報にもとづいて問い合わせ対応ができるようになります。

情報の更新作業なども簡単になるので、運用における社内の担当者の負担を減らすことができるでしょう。

AIによる問い合わせ対応については以下の記事で詳しく解説しています。

問い合わせ対応はAIで大きく変わる!メリット、AIシステムを解説します

チャットボット

Web上でのチャットボットへの質問に対しても生成AIが用いられていますが、こういった場面でもRAGを利用することができます。

チャットボットとは、Webサイト上やアプリ上のチャットボットに対して顧客が質問を入力することで、AIがテキストで自動で回答をしてくれるものです。まるで人間が対応しているように、自然な日本語で回答を作成することができます。

RAGを利用することで、チャットボットに関してもWeb上にない自社独自の情報などについて回答することができるようになります。施設における店舗や設備の情報、企業情報、商品情報、取引情報など、顧客のあらゆる疑問に回答ができるようになるでしょう。

ヘルプデスク

RAGはヘルプデスクにおいても利用することができます。ヘルプデスクでは、社内からのあらゆる質問に対して答える部門です。

ヘルプデスクに対しては、自社のルールや業務に関する質問、操作方法、該当するファイルの検索などに関して質問されることが多いです。こういった質問に回答するには、担当者やヘルプデスクシステムへの独自情報のインプットが必要になります。RAGを利用すれば、汎用的な情報に加えて自社独自の情報をもとにシステムが自動で回答できるようになります。

スタッフへの教育コスト、採用コスト、人件費などを削減することができるようになりますし、Q&Aなども自動で作成できるので作成コストを減らすことができるでしょう。

ヘルプデスクAIシステムについては以下の記事で詳しく解説しています。

ヘルプデスクでAIは活用できる?そのメリット、事例、サービスを紹介

マーケティング分析

RAGでは、マーケティング分析業務をより効率化することができます。

AIはマーケティング分析においても取り入れられています。RAGを用いれば自社の顧客情報、最新のニュース、研究データなどの独自情報をAIに学習させることができるようになります。

それによって、汎用的な情報からでは得られない、より自社のビジネスに必要な分析を行えるようになり、効果的なマーケティング戦略の作成ができるようになります。更新性も高いので、より時期やトレンドに合った分析を行えるようになるでしょう。

RAGの活用事例9選

では、具体的にRAGがどのように用いられているか、活用事例を紹介します。

1.【ヘルプデスク】LINEヤフー

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引用:LINEヤフー

LINEヤフーでは、独自開発の生成AIツール「SeekAI」を全従業員向けに導入しています。

企業が持つ独自データをRAGに学習させることで、AIによる回答の精度を高めています。社内規定やルール、問い合わせ先の検索、顧客や取引先とのコミュニケーション履歴の把握などの効率化を目指しています。

活用の場面としては、顧客とのやり取り履歴を踏まえた上での営業活動や資料作成、営業戦略の策定、従業員のツールのヘルプ情報や問い合わせ先の参照などで用いられているようです。検索・選定にかかる工数・時間を削減できたということです。

2.【ヘルプデスク】AGC

AGC
引用:AGC

AGC株式会社では、2023年から社内向け生成AI活用環境「ChatAGC」の運用を開始しています。そのChatAGCに対してRAGを導入したことで、社内データを連携することができるようになりました。

属人化された技術情報の参照、顧客ニーズの把握、過去の製造情報をもとにした対応策の作成、お客様情報をもとにした回答の作成などに活用されています。より効率的に情報を活用できるようになっています。

3.【問い合わせ対応】東京メトロ

【問い合わせ対応】東京メトロ
引用:東京メトロ

東京メトロでは、お客様センターにおいて、お客様向けチャットボットや業務に活用できるRAG活用AIシステムを導入。お客様からの問い合わせに対して、登録した社内文書などの外部情報からAIが検索、回答を生成します。

RAGによって、お客様向けチャットボットの回答範囲の拡充、お忘れ物に関するお問合せ対応の効率化、お客様からの問合せに対しての回答に必要な情報の検索、回答案の作成代行などが可能になりました。

より精度の高い情報をスピーディに生成し、業務を効率化することができています。

4.【問い合わせ対応】近畿大学

【問い合わせ対応】近畿大学
引用:近畿大学

近畿大学はRAGを利用したAIチャットボットシステムを導入しました。これまでもチャットボットを利用していましたが、あらかじめ用意した想定質問と回答からしか対応することができませんでした。

RAGを用いることで、回答の元となるドキュメントやURLからも自動学習させることが可能に。それによって、学校に関する独自の情報をもとに、高い精度で回答を生成することが可能になりました。教職員の負担軽減、回答の柔軟性の向上が実現できています。

5.【チャットボット】くすりの窓口

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引用:くすりの窓口

ドラッグストア検索予約サイト「EPARKくすりの窓口」では、生成AIチャットボットをPoC検証用として導入。

電話、メール、Webフォームなど様々な形でされる問い合わせに対して、従業員ごとに理解度が異なることで回答内容にバラつきがあったそうです。その問題を解決するためにRAGを使用したAIチャットボットを活用しました。

お客様からの問い合わせに対して、まず従業員がAIチャットボットに相談し、その回答をもとにすることで、回答の精度を高めるとともに均質化を行うことを目指しています。

6.【チャットボット】JR東日本

【チャットボット】JR東日本
引用:JR東日本

JR東日本では、2024年6月よりRAGを用いた社内向け生成 AIチャットツールを全社員に展開しています。

社内文書を登録することでRAGが学習をし、業務に関して不明点があった場合にJR東日本独自の業務内容にも回答できるようになります。全社的な業務効率化に役立てることが可能になっています。

7.【社内情報検索】助太刀

【社内情報検索】助太刀
引用:助太刀

建設業界のマッチングプラットフォームである助太刀は、生成AIを用いた社内のナレッジ共有システム「助太刀社内Wiki」を開発し、全社展開を行いました。

新入社員向けオンボーディング資料や申請フロー、営業提案資料、社内規約やルールなどに関するドキュメント、議事録などをRAGが学習することで、情報の検索をAIがサポートしてくれます。

社内の約2/3の社員がこのシステムを利用しており、情報検索の工数を大幅に短縮できています。

8.【社内情報検索】アサヒビール

【社内情報検索】アサヒビール
引用:アサヒビール

アサヒビールではビールの醸造技術などの情報に加え、ビールサーバーや容器などに関する技術情報をRAGに学習をさせ、あらゆる技術情報をすぐさま検索できるようなAIシステムを開発。

要約機能にこだわり、把握に時間のかかる技術文書を短時間で理解できるようにしています。AIが難解な文書を要約してくれ、100文字程度でまとめてくれるので、文書の検索時間を短縮できています。

9.【災害傾向分析】東洋建設

【災害傾向分析】東洋建設
引用:東洋建設

東洋建設では、RAGを用いたAI危険予知システム「K-SAFE 東洋 RAG適用 Version」を開発。

厚生労働省の労働災害データを格納し災害傾向分析ができるツールに、東洋建設災害防止基準や社内災害事例、過去の成功・失敗事例を加えています。RAGを用いて情報を学習することで、LLMがイラスト付きで社内基準をもとに回答してくれます。

安全事項の確認、リマインド、新人教育などに利用することができ、災害の未然防止、職員の負担軽減に役立っています。検索性・視認性を高めるとともに、協力会社への理解度を向上することもできるようになっています。

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まとめ

RAGの意味やメリット、活用事例などを紹介してきました。生成AIにRAGを用いることで、より正確かつ柔軟に情報を提供できるようになりますし、運用時のコストを抑えることができます。AIを活用している企業だけでなく、これからAIの活用を検討している企業の方もぜひ検討してみてください。

接客オンデマンドAIでは、生成AIを用いた対話型AIシステムの開発・運用を行っています。LLMを活用した高精度なRAG構築により自然な日本語での会話ができるAIシステムの開発が可能です。AIが顧客の発話を聞き取り音声で回答することができるので、より幅広いシーンで利用することができます。

また、運用においても専任の担当者がついてサポートを行うので、社内にITに詳しい人材を採用する必要がありません。ぜひ一度お問い合わせください。