介護業界で活用できるAIとは?メリットやAIサービスを紹介

あらゆる業界においてAIが用いられ始めていますが、介護業界においてもAIは活用され始めています。AIを用いることで介護の業務にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
ここでは、介護事業を行う企業に向けて介護にAIを用いるメリットを紹介するとともに、AIが活かせる介護業務の種類、AIサービスなどを解説します。AIの導入を検討している企業はぜひ参考にしてください。
介護業界の現況
まず、介護業界の現況がどのようなものか、なぜAIが求められているのかを解説します。
介護需要の高まり
現在、日本では介護の需要が大きく高まっています。2024年には65歳以上人口は3625万人と過去最多になり、高齢化率は29.3%となりました。厚生労働省の資料によると、人口に対する高齢者の割合は今後も高まっていくと見られ、2050年には37.1%になると考えられています。このような高齢者の増加に伴い、介護の需要が高まっているのです。
また、厚生労働省の発表によると、介護が必要な人である要介護・要支援の認定者数は694万人であり、対前年度5万人増で0.7%増となっています。この数は年々増加しており、介護を必要とする人は今後も増えていくと考えられます。
全国における介護に関する在宅サービスや施設サービスの利用者数も2040年まで増え続けると予想されています。このように、介護需要は年々高まっているのです。
人手不足
介護需要の高まりに対して、介護業界では人手不足が進んでいます。
厚生労働省の「2025年に向けた介護人材にかかる需給推計」を見ると、介護人材の需要見込みは253万人であるにも関わらず、介護人材の供給は215.2万人となっています。つまり、介護人材は37.7万人が不足しているということになります。
令和4年度の公益財団法人介護労働安定センターによる調査の「労働条件等の悩み、不安、不満等」では、「人手が足りな い」が 52.1%で最も多くなっています。このように、人手が足りないということは介護サービス側で大きな問題となっているのです。
さらに、将来においてもこの人材不足は続くと予測されており、2040年には約272万人が必要になると考えられています。
介護業界でAIを導入するメリット
介護業界でAIを導入することでどのようなメリットが得られるのでしょうか。
人手不足解消
AIを導入することで介護業界の人手不足を緩和できる可能性があります。
上でも説明したように、人手不足は現在でも介護業界の大きな問題ですが、AIを用いれば人のスタッフの代わりにAIに業務の一部を行ってもらうことができ、人の作業を減らしたり、必要な人員を減らしたりということが可能になります。それによって人手不足を解消できる可能性があるのです。
例えば、記録作成やスケジューリング、入居者の見守り、電話対応など、本来時間のかかっていた作業をAIに任せることでスタッフの作業量を減らすことができ、必要な人員数を減らすことができます。スタッフの負担を減らすことができることは退職を防ぐことにもつながり、より人手不足を解消することができるでしょう。
コスト削減
介護においてAIを導入することは、コスト削減にもつながります。介護では主な業務は人が行いますが、そのために多くの人員を採用しなくてはなりません。AIを導入すれば人が行っている業務をAIが代行することができるので、介護に必要な人員を減らすことができる可能性があります。
AIが見守りや質問への対応を行ったり、移動の補助をしたりなどを行えば、担当者がそういった業務を行う工数を減らすことができるでしょう。それによって、1日に稼働するスタッフの数を減らすことができるとともに、雇用するスタッフを減らせる可能性があります。また、AIシステムを利用すれば情報の共有や研修なども効率化でき、教育にかかるコストも減らすことができるでしょう。
このように、AIを導入することでさまざまなコストを削減できる可能性があります。
品質向上
介護業務にAIを導入することで、サービスの品質を向上することができる可能性があります。人間は稼働できる時間に制限がありますし、疲労を感じたり、集中の持続が難しかったりということがあります。しかし、AIはシステムなのでそういった身体的な制限がなく、より行き届いたサービスを提供できる可能性があります。
AIは24時間365日稼働することができますし、人間のスタッフよりも長時間疲労を感じずに働くことができます。夜間の対応や緊急時でも迅速に対応が可能なので、介護におけるリスクを抑える働きにもつながるでしょう。
また、人のスタッフだとそれぞれで知識量や経験に違いがあり、提供するサービスにおいて属人性が生まれてしまいます。AIではひとつのシステムが対応するので、常に同じ品質のサービスを提供することができます。

AIが活かせる介護の業務
AIは介護におけるさまざまな業務に利用することができます。
会話
対話型のAIは利用者との会話に活用できます。高齢になると家の外との関わりが減ることで孤独感を感じることがありますが、会話AIを用いれば話し相手となってくれるので、この孤独感を緩和できる可能性があります。
また、会話をしていないとコミュニケーションスキルは低下しますし、さらに人と関わろうとしなくなるという悪循環も起こってしまいます。AIと会話をすることで人と関わるためのコミュニケーションスキルの維持ができますし、より活動的になるということが期待できます。会話は脳への刺激を与えることができるので、AIによって認知症予防も期待できます。
見守り・モニタリング
AIは介護におけるモニタリングにも利用できます。ケアマネージャーなどは高齢者の自宅へ訪問して健康状態を把握したり、生活状況などの確認をしたりといったことを行います。AIを用いれば、高齢者に語りかけながらそういった現在の情報を収集ができます。体温や心拍、睡眠状態などの確認も行うことが可能です。
また、介護施設や在宅介護の現場などにおいては入居者が異常な行動をすることがありますが、カメラ機能を持ったAIであればそういった行動が起こった場合にスタッフに知らせるということも可能です。AIによって日々の状態のモニタリング、行動の見守りなどができるのです。
ケアプラン作成
AIはケアプランの作成にも用いることができます。ケアプランとは、介護サービスを受けるときに利用者が課題に感じていることや、どのような支援を行うかなどの方針を定めるプランです。このケアプランを作成するには、ヒアリングを行うとともに利用者や家族の意向などを反映させる必要があります。
ケアプラン作成では介護保険の知識やアセスメント、自立支援を踏まえた計画などさまざまな知識が必要になります。AIを利用すれば膨大な専門的情報をもとに、計画を作成することができます。
移動補助
AIは高齢者の移動補助に役立てることができます。介護の現場では、高齢者の歩行や移動を補助する必要があります。足腰が弱ってしまうと、日常生活を行うための歩行や外出などをひとりで行うのが難しくなってしまいます。
歩行時に支えとなってくれるAIロボットやベッドから車いすへの移動などで利用できるAIロボットなどを利用することで、より移動が楽になるでしょう。自律的に移動ができるので、介護スタッフが付き添う必要もなくなるはずです。
介護に利用できるAIサービス
介護に利用できるAIサービスにはさまざまなものが開発されてきています。
接客オンデマンドAI
「接客オンデマンドAI」は、まるで人間のように対話ができるAIサービスです。販売や接客の課題に対してソリューションを提供しているビーモーションが提供しています。
GPT(OpenAI)連携により膨大なデータを学習させることができ、それぞれにあった回答をすることができます。大規模言語モデルを利用しており文脈の理解なども可能で、自然な日本語でやりとりが可能です。
現在は主に接客の現場で用いられていますが、介護での利用も可能です。介護では、高齢者からのあらゆる質問に対して人間と同じように会話ができるので、孤独感の緩和やコミュニケーション能力の維持などに役立てることができるはずです。ヒアリングや見守りなどでの活用も可能でしょう。
SOIN
引用:SOIN(https://soin.tech/)
「SOIN」はAIを用いたケアプラン作成システムです。
過去のデータをもとに、支援内容やサービスプランの提案、アセスメント支援機能、今後の状態予測などを行ってくれます。AIがさまざまなデータをもとに提案してくれるのでケアマネージャーの負担を減らすことが期待できます。
ケアプラン作成に自信が持てるようになるとともに、根拠のある説明などもできるようになるでしょう。
エイアイビューライフ
引用:エイアイビューライフ(https://aiview.life/)
「エイアイビューライフ」は、自律支援型の見守りロボットです。居室にカメラを設置することで、プライバシーに配慮しながら画像認識で見守りを行います。
広角IRセンサーを採用しており、居室の全エリアを対象に危険予兆動作や危険動作をAIが検知します。介護記録やナースコールとも連動しており、スタッフの手間を減らしてくれるとともに、重大な事故の防止が期待できます。

まとめ
介護業界ではAIを用いることで、現在起こっている問題や将来予測されている人手不足の問題を解決できる可能性があります。さらに、事業者はAIを用いることでコスト削減やサービス品質の向上などの効果も得られるかもしれません。さまざまなサービスが開発されているのでぜひ検討してみてください。
「接客オンデマンドAI」は介護特化のサービスではありませんが、対話に特化したAIサービスです。高齢者との会話をAIが行うことで、孤独感の緩和や認知症の予防などが期待できます。大規模言語モデルによって、自然な文章で会話ができますし、GPT(OpenAI)連携によりあらゆる質問に回答することができます。また、外部からの問い合わせに対しても電話やチャットで回答することなども可能です。
専任のスタッフがつきAIへの学習や運用支援なども行うので、知識がなくても導入・運用が可能です。ぜひ一度ご相談ください。