AIエージェントとは?メリットや将来性、課題を解説します

AIの発達は目覚ましく、現在ではAIエージェントというプログラムが生み出されています。AIエージェントによって、人間の行っている作業をAIにさせることが可能になります。ただ、AIエージェントはどのようなシーンで利用できるのか、どんなメリットがあるのかなどがわからないかもしれません。
ここでは、AIエージェントがどのようなものか、どんな場面で利用できるのか、AIエージェントの課題までを解説します。
AIエージェントとは
AIエージェントとはどのようなものなのでしょうか。
AIエージェントの意味
AIエージェントとは、複数のAIを組み合わせることで、複雑なタスクを実行するAIのことです。従来のAIはユーザーの指示に対して、単一の回答や動作のみを行っていましたが、AIエージェントではユーザーが与えた目標に対して、AI自身で情報を収集、タスクを計画し、自動的にタスクを達成します。AIが回答を行うだけでなく、AI自身が行動をすることが特徴といえます。
例えば、経理や法務のタスクであれば財務データや法律知識、過去の事例などから、最適な処理を行わせるというような使い方ができます。また、膨大な顧客データから得られるインサイトを自動的に抽出し、提案するなどといったことも可能です。
このように、AIエージェントでは生成AIのように単一の回答を得るだけでなく、人間に代わって仕事を行うことができるソリューションなのです。
AIエージェントと生成AIの関係性
AIエージェントには生成AIが大きく関わっています。その関係性とはどのようなものなのでしょうか。
生成AIとは、学習したデータをもとにコンテンツやアイデアを生成するAIです。AIエージェントはこの生成AIの機能を利用したシステムです。生成AIはユーザーからの指示を必要とし受動的ですが、AIエージェントはエージェントから働きかけ能動的に業務を行います。AIエージェントは、さまざまな機能をもった複数の生成AIを組み合わせることで、単一の生成AIでは行えないような作業を自律的に行えるようになっています。
生成AIの普及によってAIの有用性が認知され、さまざまな業務が可能なAIエージェントが生み出されています。
AIエージェントの導入
AIエージェントは現在どれくらい導入されているのでしょうか。そして今後どのようになるのでしょうか。
日本での利用状況
経営層を対象にした調査では、「AIエージェントの活用に積極的な姿勢を示した企業の割合」は日本では26%となっています。世界平均は32%なので、日本ではAIエージェントの活用に対して慎重であることが伺えます。「AIエージェントについて想定する役割」では、日本は「探索中」の割合が72%でほかの国と比べて高く、AIエージェントに関心があるけれども、業務品質やリスクなどを踏まえて検討していることがわかります。
また、20〜50代のビジネスパーソンを対象にしたAIエージェントについての調査では、「AIエージェントを知っているか」という質問に対して半数が知らないという状況でした。ただし全体では1割が利用をしており、大企業では20.4%が利用しているという結果でした。日本でもAIエージェントの利用は進んできているようです。
AIエージェントの今後
では、AIエージェントは今後普及していくのでしょうか。上の調査のAIエージェントの活用意欲についての質問に対して、「とてもある」「ややある」は50.6%でした。約半数がAIエージェントの活用意欲があることがわかります。企業規模でみると、大企業に所属している人では7割近くが活用意欲を示す結果となっています。今後、AIエージェントを活用する人は増えていくと考えられます。
また、NTTデータグループの社長である佐々木氏は、「2025年からAIエージェントの時代が始まる。2024年に生成AIが急速に普及したことで個人の生産性が向上したが、今後はAIエージェントが組織の生産性を大きく変える」と話しています。AIエージェントはこれから普及が進み、個人だけでなく組織の生産性が大きく変わっていくでしょう。

AIエージェントの種類
AIエージェントはさまざまな業務を行うことが可能ですが、その機能や仕組みによっていくつかの種類に分けることができます。
反射エージェント
反射エージェントとは、ユーザーの行動に対して反射的にAIが行動を行うものです。反射エージェントには、「単純反射エージェント」と「モデルベース反射エージェント」があります。
単純反射エージェントは、あらかじめ決められた条件やルールに従ってAIが行動するものです。チャットボットやスマートスピーカーのように事前に条件と対応が決められており、AIがそれに従って行動します。
モデルベース反射エージェントは、経験やデータをもとに現在の状況に応じた判断や行動をAIが行うものです。単純反射エージェントよりも複雑な行動ができるのが特徴です。周囲の状況や速度、道路状況などに応じて自動車を操作する自動運転や、車両や歩行者の流れを観測し信号の切り替えを行う交通信号制御システムなどがあります。
目標ベースエージェント
目標ベースエージェントとは、ユーザーが目標を指定し、その目標を達成するために必要な作業をAIが自律的に選択するシステムです。予測や計画、推理を行い必要な行動を選択するので、条件反射的に単純な行動をするのでなく、状況に応じた行動を自身で組み立てて行動することができます。
目標ベースエージェントは、目標を達成するために必要な複数の行動を自律的に組み立てて実行しますが、どのような手段を取ることができるかはあらかじめ学習させておかなくてはなりません。また、与える目標は、解決策が導き出せる明確な目標でなくてはなりません。
目標ベースエージェントは、経路最適化が求められる配送システムや在庫の最適化が必要な在庫管理システムなどで用いられています。
効用ベースエージェント
効用ベースエージェントとは、AIによって効用が得られるシステムのことをいいます。単に目標を達成するだけでなく、効果や満足を最大化するような行動を取るのが特徴です。単純にひとつの目標を達成するためでなく、複数の目標に評価をつけながら、もっとも効用を得られる選択をします。
金融市場での売買を行うAIシステムが効用ベースエージェントに該当します。リスク、コスト、市場などあらゆる要素を検討しながら、収益を最大化するための売買行動を選択します。
学習エージェント
学習エージェントは、過去の経験や行動結果から学習をし、自己改善を行い続けるAIシステムです。実行とフィードバックを繰り返すことで、特定の目標を達成するための最適解を見つけ出します。学習が必要なので結果に対する評価が必要になりますし、学習データの質と量が必要になります。
お客様と会話を繰り返すことで学習する対話型AIシステムや、過去の対話データから自然なやり取りができるようになるチャットボットなどが該当します。
AIエージェントの用途
AIエージェントができることは多く、さまざまな用途で用いることができます。
先ほどのビジネスパーソンへの調査の「AIエージェントがどのような業務に役立つと思うか」との質問に対しては、以下のような結果となりました。
ルーティン業務の自動化 | 36.5% |
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レポート・文書の自動作成 | 28.5% |
高度・複雑なデータ分析 | 23.8% |
カスタマーサポートの自動化・高度化 | 19.2% |
ルーティン業務の自動化
AIエージェントはルーティン業務の自動化に用いることができます。特定の業務をプログラムすることで、AIエージェントは自動で作業を繰り返します。生成AIのように特定の行動だけをするのでなく、AIエージェントは複雑な行動を組み合わせて行うことなども可能であり、より柔軟な対応ができるでしょう。
例えば、資料の保存や整理、顧客管理システムへの入力、見積書や請求書の作成などの作業は、決まった手順に従って作業を行っていますが、多くの時間を取られていると思います。こういった作業をAIエージェントが自動化できるのです。
レポート・文書の自動作成
AIエージェントを利用することで、レポートや文書の自動作成が可能になります。
AIエージェントは自動で情報収集を行い、レポートや文書の作成を行ってくれます。多くの情報のなかから情報を分析し、信頼性の高いレポートを作成することができます。フィードバックを繰り返すことで、より目的に合ったレポートや文書を作ることができるようになるでしょう。
メールや議事録、契約書、プレゼン資料、企画資料の作成などをAIによって自動化することができます。
データ分析
データ分析でもAIエージェントは用いられます。AIは膨大なデータの学習と分析が可能です。AIエージェントを活用することで短時間で正しい分析が行えるでしょう。
人間がデータ分析を行う際には、情報処理の能力や数学、統計学、関数、プログラミングなどの知識やスキルが必要になります。データ分析には時間もかかりますし、主観が入ってしまうことやミスをしてしまうことがあります。AIエージェントであれば、膨大なデータを短時間のうちに分析し、役に立つ結論を得られるでしょう。
市場分析や顧客の傾向分析、自社の分析、マーケティング施策の検討、企業分析など、広い活用方法が考えられます。
顧客対応の自動化
AIエージェントによって、これまで人間が行っていた顧客対応をAIが自動で行うことができるようになります。
AIエージェントは生成AIを用いており、人間と同じような自然な会話が可能で、人間のスタッフと同様の対応ができます。AIエージェントは人間とのやりとりやQ&Aから学習をし最適化ができるので、あらゆる質問に対して回答ができるようになります。
AIエージェントは企業や施設の受付、カスタマーサポート、商品やサービスの接客、電話の一次受けなど、幅広い顧客対応のシーンで利用できるでしょう。

AIエージェントのメリット
AIエージェントを利用することで多くのメリットを得られます。
業務効率化
AIエージェントを用いることで業務効率化が可能です。AIエージェントはこれまで人間が行っていた作業を代わりに行ってくれます。
ルーティン業務や、データ分析や入力、文書作成、メール作成、資料作成などの作業をAIが行うことで、業務にかかる手間を大幅に減らすことができるでしょう。人間よりも数学的な能力があるので正確な結果を得られますし、ミスなども起こらないのでより業務効率化が行えます。人間のように体調や学習状況によってアウトプットに変化が起こることがないというメリットもあります。
コスト削減
コスト削減も、AIエージェントを用いるメリットです。AIエージェントを用いることで、人間が行っていたさまざまな業務を自動化することができます。それによって人員を減らすことができ、人件費を減らすことができるのです。
問い合わせ対応や受付など、本来人を採用しなければならなかった部門を無人化することもできるので、採用のためのコストや継続的にかかっていた人件費を減らすことができるでしょう。
ルーティン業務をAIが行うことで、既存のスタッフは注力すべき作業やクリエイティブな作業に集中できるようになり、より生産性を高めることにもつながります。
従業員満足度の向上
AIエージェントによって、従業員満足度の向上も可能です。AIエージェントを導入することで、従業員の日々の仕事の負担を減らすことができます。AIエージェントではルーティンワークを自動化できますし、難しい作業などもAIに代行してもらえます。
また、ヘルプデスクにAIエージェントを用いれば、ヘルプデスクの担当者の負担を減らすことができます。人間が対応する場合には回答を得るまでに時間がかかることがありますが、AIであればすぐに回答を得ることができるのでタイムロスもありません。AIエージェントはロールプレイングに利用することもできるので、教育係の負担を減らすことができるでしょう。
このように、AIエージェントを用いることで、従業員の負担を減らすことができます。なにより、企業が従業員の日々の業務を楽にするために投資を行うという姿勢は、従業員の満足度を向上することにつながるでしょう。
AIエージェントの課題
AIエージェントには多くのメリットがありますが、導入する際には課題があります。
コスト
AIエージェントを導入するにはコストがかかります。目的に合ったAIエージェントを作るには開発をしなくてはなりません。そして、AIエージェントを用いるには、用途に応じたAIの開発や機能の設計、情報の学習などを行わなくてはなりません。AIの開発というのは高度なノウハウが必要になってくるので、ある程度大きなコストがかかってきます。
すでに特定の機能の備わった、SaaSのAIエージェントであればイチから開発するほどのコストはかかりませんが、自社情報を学習させたり自社の条件に合わせてカスタマイズするための費用などはかかってきます。
AIエージェントの導入を検討している場合には、一定の予算を考慮する必要があるでしょう。
スキル不足
AIエージェントを活用するには、社員がAIエージェントを扱うスキルが不足することも課題のひとつです。AIエージェントをうまく活用するには、操作方法や活用すべきタイミングなどを理解しておかなくてはなりませんが、従業員にその知識やスキルが不足しているのです。
現に、「AIエージェントについての調査」のAIエージェントの活用を進める上での障壁についての質問においても、「社員のスキル不足」が32.5%で最も多い結果となっています。
AIエージェントを導入しても、社員が業務で活用できないと効果が得られません。企業ではこういったスキルや知識を教育しなくてはなりませんが、そのための人員やコストが必要になることにも注意しましょう。
セキュリティやプライバシー
セキュリティやプライバシーの問題も、AIエージェントでは注意しなくてはなりません。
AIエージェントに学習させるデータには個人情報などが含まれる場合があります。そういった個人情報をAIが発信してしまうと、プライバシーを侵害してしまうことになりますし、企業の信用を損なうことになってしまいます。個人情報を発信しないような仕組みを構築するとともに、チェックを行う必要があります。
また、AIでは間違った情報を生成する「ハルシネーション」が起こることがあります。誤った情報をもとに社員が仕事をしてしまったり、顧客に対してAIが回答をしてしまったりすると大きな問題となってしまうでしょう。AIエージェントが正しい情報を提供しているかをチェックする体制が必要になります。

まとめ
現在、AIエージェントは多くの企業で取り入れられ始めていますし、今後も利用は拡大するでしょう。AIエージェントを利用することで、業務効率化やコスト削減など、多くのメリットが得られるでしょう。AIエージェントを利用することでルーティン業務や文書作成、データ分析、接客やカスタマーサポートなどを自動化することができます。
接客やカスタマーサポートを自動化したいという方には、「接客オンデマンドAI」がおすすめです。接客オンデマンドAIは対話型のAIエージェントです。大規模言語モデル(LLM)を用いることで自然な日本語で会話をすることが可能なので、顧客対応やカスタマーサポートをAIが代行してくれます。GPT連携によって商品知識や専門用語を独自に学習でき、より柔軟な対応を行うことができます。
接客オンデマンドAIを導入、運用する際には、専属の担当がつきAIへの学習や運用を行うので、企業内にITに詳しい人材を採用しなくてもよいというのもメリットです。お気軽にご相談ください。