飲食店はAIでどう変わる?メリットや活用できるシステム、事例を紹介

AIの発達とともに、飲食店でもAIの導入が進んでいます。飲食店でAIを導入することでさまざまなメリットが得られますが、AIを理解せずに導入しても十分な効果を発揮できず、競合との差が広がってしまうリスクがあります。
そこでこの記事では、飲食店においてAIを活用できる場面を紹介するとともに、AIを活用するメリット、活用事例などを解説します。
飲食店におけるAI活用の現状
飲食店におけるAI活用の現状はどのようなものなのでしょうか。
飲食店のAI活用状況に関するアンケート調査によると、AIを「積極的に利用している」と回答したのは16.3%、「利用してみたが、うまく使いこなせていない」と回答したのは10.4%でした。つまり、全体の26.7%がすでにAIを導入し、何らかの活用経験を持っていることがわかります。そして、AIを実際に利用している飲食店の約74%が、その効果に「満足している」と回答しています。
一方で、AIをまだ利用していない飲食店でも「利用したことはないが、今後利用したいと考えている」と答えた割合が39.3%にのぼり、今後AI導入を検討する店舗が増加していく可能性が高いといえるでしょう。このように、飲食店におけるAI活用はまだ全体として普及段階にあるものの、今後の利用拡大が期待される現状にあります。
飲食店でAIを活用できる場面
では、飲食店においてAIが活用できるのはどのような場面でしょうか。
顧客対応
AIは飲食店での顧客対応に活用することができます。飲食店の顧客対応は、来店客の満足度やリピーター獲得に直結する重要な業務です。
しかし、スタッフの経験やスキルに依存しやすいですし、忙しい時間帯には対応の質が下がってしまうこともあります。AIを導入することで、メニューや食材に関する質問への自動応答や、顧客の状況に応じた最適な提案が可能となり、接客の均一化と効率化が実現できるでしょう。
例えば、AIチャットボットを導入すれば、メニューの詳細やアレルギー対応に関する質問に即座に答えることができます。また、テーブル上のカメラやセンサーを用いたシステムでは、グラスの空きを検知しておかわりを提案するシステムなどもあります。このようにAIを顧客対応に活用することで、飲食店はサービスの質を高めつつ業務効率も向上させることができるのです。
問い合わせ・予約対応
飲食店の問い合わせや予約対応においても、AIを活用することができます。
予約や問い合わせは店舗運営に欠かせない業務ですが、電話やメールの対応にスタッフの時間が取られてしまい、接客や調理などの本来の業務に支障が出ることがあります。AIを導入すれば、営業時間外でも自動で問い合わせに答えたり、予約の空き状況を確認して即時に受付することが可能です。
AIが基本対応を担い、特殊なリクエストだけをスタッフに振り分ける仕組みにすることなども可能です。AIを問い合わせや予約対応に導入することで、顧客の利便性を高めると同時に、店舗の業務効率化も実現できるでしょう。
発注
飲食店においては、AIを活用することで食材や備品の発注を最適化することができます。
発注業務は在庫管理や仕入れコストに直結する重要な業務ですが、人の勘や経験に頼ると過不足が発生しやすく、結果的に廃棄ロスや品切れによる機会損失につながります。AIを導入することで、来客数の予測や過去の販売データをもとに必要な食材量を算出し、最適なタイミングと数量で発注を行えるようになります。
さらに、AIは在庫状況や売れ筋メニューの動きをリアルタイムで把握できるため、「そろそろ特定の食材が不足する」といったアラートを出すことも可能になります。このようにAIを発注業務に取り入れることで、飲食店は在庫ロスを減らし、仕入れコストを抑えながらも安定したサービス提供を実現できるでしょう。
配膳
AIは飲食店での配膳にも活用することができます。配膳は飲食店のオペレーションの中でも時間と労力を多く必要とする業務であり、スタッフ不足や混雑時には顧客満足度を下げる原因にもなります。AI配膳ロボットなどを活用すれば、注文内容や提供タイミングを自動で最適化し、スタッフの負担を減らしながら迅速な配膳が可能になります。
実際、「配膳ロボットと働くホールスタッフの実態調査レポート」では「配膳・下げ膳業務の負担が減った」が66.3%、「接客、飲み物の補充など他の業務に時間を使えるようになった」が49.5%、「作業効率が向上した」が38.6%と回答されており、業務効率化の効果が明確に示されています。
このように、AIを配膳に活用することで、業務効率を高めると同時に顧客により満足度の高いサービスを提供できるでしょう。
アドバイス・相談
飲食店においては、スタッフがわからないことをAIに相談できる仕組みを導入することで、業務効率と接客品質を高めることができます。飲食店の現場では、顧客からの質問や業務手順で不明点が出ることが多く、その都度マニュアルを探したり、上司や同僚に確認したりすると時間がかかってしまいます。AIを導入すれば、そんな時にもスタッフは即座に正確な情報を得られ、顧客対応を止めることなくスムーズに業務を進められるようになるでしょう。
実際、「外食・小売業界の業務環境とAI導入への意識調査」によると、「困った時にすぐに正しいアドバイスをしてくれるチャットやAIのような仕組みがあったら、使ってみたいと思いますか?」という質問に対して、外食・小売スタッフの55%が「すぐに使いたい」「興味はある」と回答しており、現場のニーズは高いことがわかります。
一方で「職場でAIが相談相手になること」については、ポジティブ28%、中立36%、ネガティブ36%と意見が分かれており、導入にあたっては信頼性や心理的な抵抗をクリアする必要があることがわかります。

飲食店がAIを活用するメリット
飲食店はAIを活用することで、どのようなメリットが得られるのでしょうか。
人手不足解消
飲食店がAIを導入することで、人手不足の課題を解消できる可能性があります。
飲食業界ではピークタイムに接客や注文対応、在庫管理やシフト調整など多岐にわたる業務が集中するため、十分な人材を確保できない場合に負担が大きくなりがちです。こうした場面でも、AIを活用すれば人間が行う作業を減らすことができ、限られた人員でも円滑な店舗運営を実現できる可能性があります。
例えば、AI接客ツールを導入すればスタッフが質問に回答したりおすすめしたりする時間や、注文を取る時間を削減できますし、AIによる予約管理や発注支援システムを活用すれば業務の効率化が可能です。さらに、配膳ロボットの導入によって配膳作業を分担でき、人員を減らせるでしょう。
コスト削減
飲食店がAIを導入することで、コスト削減が期待できます。
飲食店経営では、人件費や食材ロス、業務効率の低下による無駄な支出が大きな課題となりす。AIを活用すれば、注文や在庫の管理を最適化できるため、余分な人件費や廃棄コストを抑えられます。さらに、予約状況や来店予測に基づいたシフト調整も可能になり、無駄な人件費の発生を防ぐことができます。
このように、AIを活用することで飲食店は人件費や食材ロスを抑え、効率的で収益性の高い経営を実現できるはずです。
売上アップと利益率の向上
飲食店がAIを活用することで、売上の増加や利益率の向上につなげることができます。
AIは顧客データや来店履歴を分析し、一人ひとりに合わせたメニュー提案やキャンペーンを行えるため、追加注文やリピート利用を促進できます。さらに、需要予測に基づいた仕入れや価格設定を行うことで、食材ロスを削減しながら利益率を高めることも可能です。また、AI分析を活用したタイムセールやプッシュ通知を行うことで、アイドルタイムの集客強化にも役立つでしょう。
AIを取り入れることで、飲食店は新規顧客の獲得からリピーター育成まで幅広く強化でき、売上アップと利益率の向上を目指せるのです。
顧客体験の向上
飲食店がAIを活用することで、顧客体験を向上させることが可能です。
AIを導入すれば、来店予約から注文、会計に至るまでスムーズな体験を提供でき、待ち時間や手間を減らすことができます。また、接客においても、AIが対応することでサービス品質を均一化できるほか、スタッフが不明点をAIに確認できるようになれば、接客のばらつきを減らし常に一定のレベルで顧客に対応できるようになります。
さらに、AIは顧客の過去の来店履歴や注文履歴を分析し、一人ひとりの好みに合わせたメニュー提案やプロモーションを行うことなどもできます。このように、AIを活用することで飲食店はサービスの均一化とパーソナライズを両立させ、顧客満足度を向上させることができるのです。
飲食店におけるAIの活用事例
現在、多くの飲食店でAIが取り入れられ始めています。その活用事例を紹介します。
AIロボが会話しながらすメニューを提案:すかいらーくグループ
引用:Microsoft Customer Stories(https://www.microsoft.com/ja-jp/customers/story/22991-skylark-group-azure)
すかいらーくグループでは、飲食店における顧客体験を高めるために、AIを活用した「Co店長」プロジェクトを進めています。実証実験ではタブレット型デジタルメニューブックに「AIロボとおはなしして商品を選ぶ」という新しい機能を導入しました。来店客はテキスト入力や音声入力を通じてAIロボと会話しながらメニューを選べるようになっており、単なる注文補助ではなく、会話を楽しみながらおすすめの料理を提案してくれる仕組みです。
実際に導入された店舗では、AIロボとの会話を楽しみに来店する顧客も現れ、リピーターの増加が見られています。また、AIが生成する会話ログをもとに日報を自動作成する仕組みも導入されており、店舗スタッフの業務負担軽減や運営効率の向上にもつながっています。
AI配膳ロボットを活用:山田うどん
引用:DFA Robotics(https://dfarobotics.com/topics/1cdrj1v_0xfe/)
山田うどんでは、店舗業務の効率化と人手不足解消を目的に、AI配膳ロボットを積極的に導入しています。このロボットは、配膳作業の約7割を担い、残りの3割を下げ膳に使用されており、1日に換算すると約100回分の配膳を代替できるとのことです。
スタッフからは「身体が楽になった」「ロボットを手放したくない」という声も上がっており、特に重い料理を運んだり、ピーク時の移動が多い時間帯での負担軽減が顕著です。26店舗を対象に調査したところ、配膳ロボットの導入によって、1カ月あたり従業員の勤務時間を店舗平均で72時間削減する効果が確認されました。
AIで来客予測:ゑびや大食堂
引用:読売新聞(https://www.yomiuri.co.jp/topics/20210322-OYT8T50051/#google_vignette)
ゑびや大食堂では、AIを活用して来客予測を行う取り組みを進めています。過去の売上データや曜日・時間帯・天候など様々な外部要因を学習させ、来客数の変動を予測することによって、スタッフ配置・仕入れ量などの最適化を図ります。
また、来客予測が精度を増すことで、ピーク時間帯の混雑をあらかじめ見越した対応ができ、顧客満足度の向上にも寄与します。スタッフの負荷を軽くするシフト調整が可能になったり、キッチンやホールでの待ち時間を短縮するといった効果も期待されます。
この取り組みによる具体的な効果として、仕入れや人件費の最適化により年間数百万円規模のコスト削減を実現したほか、在庫ロスの削減や売上機会の最大化に成功しました。さらに、ピーク時の混雑緩和により顧客満足度が向上し、リピーター増加にもつながっています。
本社への問い合わせをAIチャットボットが回答:松屋フーズ
引用:User Local(https://chatbot.userlocal.jp/document/casestudy/matsuyafoods-holdings/)
松屋フーズでは、全国に展開する約1,200店舗から本社に寄せられる問い合わせの対応が大きな負担となっていました。毎月8,000件を超える問い合わせが集中し、電話応対に多くの時間と人員が割かれていたため、本来の業務に支障が出るケースもありました。こうした背景から、問い合わせの一部を自動化するためにAIチャットボットを導入し、効率化と業務負担の軽減を進めています。
導入初期は福利厚生に関するFAQからスタートしましたが、その後システムサポートや品質保証、備品発注、採用など複数の部門に対象を拡大。管理画面には経路分析やキーワードの自動抽出機能が備わっており、利用者の質問傾向を把握しながら回答シナリオを追加・改善するサイクルを継続的に回しています。
AIチャットボットの回答率は平均で60%以上を維持し、直近では67%を超える水準に達しました。電話による問い合わせ件数は導入後に大幅に減少し、2022年10月から12月の期間では約35%、2023年夏には約41%の削減効果が確認されています。

まとめ
飲食店はAIを活用することで、業務効率化や人手不足解消、コスト削減、売上アップなどのメリットが得られます。AIを活用したシステムにはさまざまなものがありますが、顧客対応の人員が足りない、ホールスタッフの効率化をしたい、コストを削減したいという場合には、対話AIシステムを利用するのがおすすめです。
「接客オンデマンドAI」は、各テーブルに設置したタブレットから、AIが質問対応や提案を行えるサービスです。注文や食材・メニューに関する質問への回答、嗜好に合ったメニューの提案だけでなく、多言語対応も可能なため外国人観光客の接客にも活用できます。
接客オンデマンドAIは人間らしい自然な対話ができるので、顧客満足度の向上につながります。スタッフが接客にかける時間を削減できるため、少人数の店舗運営にも役立つはずです。ぜひお気軽にご相談ください。